Synspectiveは、いくらなら買いたい?|12機目の打上げ成功後の適正価格帯を考える【2026年9月19日】
Synspectiveの衛星打ち上げ成功と、企業価値・株価の関係を考えるメンバー限定記事の無料部分です。

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情報基準:2026年9月19日。9月19日は土曜日のため、株価は直近営業日の9月18日15:30東証終値を使っています。
こんにちは、ぱんだ塾長です🐼
今日の夕刊で見つけたのは、宇宙から地球を観測するSynspective(290A)でした。
理由は分かりやすいです。
今日、自社12機目となる小型SAR衛星「StriX」の打ち上げに成功しました。
9月19日12時22分ごろ(日本時間)、ニュージーランドからRocket LabのElectronロケットで打ち上げられ、目標軌道への投入とアンテナの展開まで確認されています。
ただし、打ち上げた瞬間から売上を生むわけではありません。
会社は今後数カ月かけて衛星の機能を確認し、その後サービスへ投入する予定です。
ここが今回の記事で一番大事なところです。
衛星が増えることは間違いなく前進。
でも、「打ち上げ成功=今の株価が安い」とは限らない。
9月18日の終値は1,563円。
前日比では+9.38%と大きく上昇しました。時価総額は約2,096億円です。年初来高値2,140円からは約27%下にあります。
Yahoo!ファイナンス|Synspective(290A)
しかも、12機目の打ち上げ成功が発表されたのは土曜日。
つまり、発表後の東証での株価反応は、まだ確認できません。 打ち上げへの期待が金曜日までに織り込まれていた可能性とは、分けて考えます。
9月18日には三菱重工と、2027年にH3ロケットでStriXを2機打ち上げる契約も発表されています。
では、
Synspectiveは良い会社なのか?
そして、
今の1,563円は、どこまで将来の成長を織り込んでいるのか?
今回は、コーセルやオルガノのようにPERだけで計算するのではなく、
「将来どれだけ売上を作れる会社になるか」
から適正価格を考えます。
また、今回の価格帯には「株価の上限」という意味はありません。
Synspectiveが現在想定している以上の成長を実現すれば、今回の強気ケースを大きく上回る株価も計算できます。
そこまで含めて考えてみます。
※この記事は公表資料と明示した仮定を使った価格試算です。会社や証券会社の目標株価ではなく、将来の株価を保証するものでもありません。特定の読者への売買推奨ではありません。
① 🛰️ そもそもSynspectiveは、何を売っている会社?
Synspectiveは、小型のSAR衛星を自社で開発・運用しています。
SARは、簡単にいうと、
宇宙から電波を地上へ飛ばして、その反射を使って地表を見る技術
です。
普通のカメラとは違って、
夜でも見える
雲があっても観測できる
雨や台風の時でも使いやすい
という特徴があります。
そのため、
防災
インフラ監視
安全保障
資源開発
などで使えます。
そしてSynspectiveの特徴は、衛星を1機だけ持つのではなく、たくさんの衛星を飛ばして連携させることです。
会社は、2020年代後半に30機規模の衛星群を構築することを目指しています。
Synspective|StriX Constellation
なぜ衛星を増やす必要があるのでしょうか。
衛星が1機しかなければ、見たい場所の上空へ衛星が来るまで待たなければなりません。
でも10機、20機、30機と増えていけば、
「もっと頻繁に同じ場所を見られる」
ようになります。
災害や安全保障では、この「何日後に見られるか」ではなく、
「どれだけ早く見られるか」
が非常に重要になります。
だから今回の12機目成功は、単に
ロケットが打ち上がって良かった
というニュースではありません。
衛星を増やして、商品そのものの価値を高めるための一歩
です。
② 🚀 12機打ち上げた=12機がすぐ売上を作る、ではない
ここは注意したいところです。
今日の発表では、12機目は目標軌道へ入り、アンテナ展開まで成功しました。
ただし会社は、
今後数カ月かけて観測性能などを確認してからサービスへ投入する
としています。
つまり、
打ち上げ成功
→ 動作確認
→ 商用運用
→ 撮像
→ データ販売
→ 売上
と何段階もあります。
打ち上げ成功は非常に重要ですが、株価を見る時には、
「ロケットに乗った衛星の数」より、「実際にお金を稼いでいる衛星が何機あるか」
を見る方が大切です。
会社が2025年5月に示した売上モデルでは、短期的には11機前後の運用衛星を想定し、月間の撮像能力を約11,700枚まで増やす計画でした。これは過去に示されたモデルで、現在の稼働実績や最新の売上予想ではありません。
さらに2028年以降は30機超、月間36,000枚以上を目指しています。
Synspective|2025年12月期 第1四半期決算説明資料・売上モデル
今回の12機目打ち上げは、その計画が実際に前へ進んでいることを確認できる材料です。
ただし、
「12機目の打ち上げ成功=12機すべてが現在フル稼働」ではありません。
③ 📊 今の利益だけでPERを見ると、かなり分かりにくい
Synspectiveの2026年12月期上期は、
売上高:約16.91億円
営業損失:約33.50億円
経常損失:約13.72億円
純損失:約14.17億円
でした。
その大部分を占めるのが、防衛省の衛星コンステレーション事業です。
会社説明では、この事業だけで5年間に960億円超の契約規模があり、4月からすでにサービス提供を始めています。
会社が2月に公表した、トライサット・コンステレーション、三菱電機、Synspectiveの間の画像データ取得業務委託契約では、税込契約額は1,056億円、期間は2026年2月19日から2031年3月31日です。防衛省との直接契約ではなく、防衛省事業を担う契約です。
これはかなり大きいです。
2025年の売上高は約23.8億円でした。
それに対して、5年間とはいえ約1,000億円規模の大型契約が入っています。
売上と比べる際は税込額ではなく税抜額を使います。会社説明の約960.7億円を単純に5年で割ると、年間約192億円です。
もちろん、
実際の売上が毎年きれいに5分の1ずつ計上されるわけではありません。
衛星の稼働状況、サービスの提供量、契約上の計上方法によって変わります。
でも、
「将来売上が数百億円規模へ増える可能性を考える根拠がない会社」ではない
ということは分かります。
⑤ 💰 今の1,563円は、売上に対してどのくらい高い?
9月18日の終値は1,563円。
時価総額は約2,096億円です。
一方、会社の2026年売上予想は63.53億円。
単純に割ると、
2,096億円 ÷ 63.53億円 = 約33倍
です。
これはPSRという見方です。
PSRは、
「年間売上の何倍の値段で、その会社全体が評価されているか」
という数字です。
利益がまだ出ていない成長企業を見る時によく使われます。
今のSynspectiveは、
今年の売上の約33倍の時価総額
がついています。
かなり高いです。
ただし、
33倍だから割高
と判断するだけでも不十分です。
市場は今年の63億円だけを見ているのではなく、
1,217億円の受注残
+ 衛星30機体制
+ 国内防衛
+ 海外政府
+ 民間ソリューション
まで先に評価しているからです。
つまり、
「どれだけ将来の売上が増えれば、2,100億円という時価総額を説明できるのか」
を逆算した方が分かりやすいです。
⑥ 🧮 今の株価を説明するには、売上がいくら必要?
現在の時価総額約2,096億円を固定して考えます。
仮に将来、Synspectiveが売上高の10倍で評価される会社になるなら、
2,096億円 ÷ 10倍 = 年間売上 約210億円
が必要です。
PSR8倍なら、
約262億円。
PSR6倍なら、
約349億円。
PSR5倍なら、
約419億円。
つまり今の1,563円は、
PSRを5〜10倍と置くなら、年間約210億〜419億円の売上と対応する時価総額である
と見ることができます。これは仮定からの逆算であり、市場参加者が実際にこの売上を予想していると確認できたわけではありません。
もちろん、何倍が正しいかは決まっていません。
成長率が高ければ10倍以上で評価されることもあります。
逆に、成長が鈍ったり本業の赤字が長引いたりすれば、5倍以下へ評価が下がることもあります。
⑦ 🛰️ 年間200〜300億円の売上は、現実離れしている?
ここが面白いところです。
会社が2025年5月に示した過去の売上モデルでは、
運用衛星:約11機
月間撮像可能枚数:約11,700枚
データ販売率:約20〜40%
想定販売単価:約30〜50万円
という数字を出しています。
これをかなり単純に計算すると、
低い条件では、
11,700枚 × 20% × 30万円 × 12カ月
= 年間約84億円
高い条件では、
11,700枚 × 40% × 50万円 × 12カ月
= 年間約281億円
です。
これは会社の売上予想ではありません。
過去の会社資料にあるKPIを単純に掛け算した参考値です。最新の2026年5月資料では、1機あたりの撮像能力や契約先別の販売を軸にした別の売上モデルが示されています。ここでは過去モデルの規模感を確認するために使い、最新計画としては扱いません。
実際には、
全部を同じ単価で売れるとは限らない
ソリューション事業の売上は別
政府契約は料金体系が違う可能性がある
衛星が常に最大能力で撮像できるわけではない
ため、そのまま売上予想には使えません。また、この能力で提供するデータには防衛省案件向けも含まれ得るため、この試算に防衛省案件の売上をそのまま上乗せすると、二重計上になる可能性があります。
それでも、
条件がそろえば、過去モデルの掛け算でも数百億円規模になる
ことは分かります。ただし、これは需要や契約、達成時期を確認した売上予測ではありません。
さらに会社は、2028年以降に30機超の衛星体制を目指しています。
だからSynspectiveを見る時に重要なのは、
衛星を打ち上げられるか
だけではありません。
打ち上げた衛星を稼働させ、その撮像能力を実際に販売できるか
です。
⑧ 🔴🟡🟢🔵 4つの条件で価格帯を考える
ここからは、
将来売上高 × 想定PSR = 想定時価総額
で計算します。